プラップジャパンでは、2月中旬から新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)に関してTwitter上のデータ観測を続けてきた。社会が大きく変化する中、新型コロナに対する関心がどう変化したか、ソーシャルリスニングのデータをもとに分析する。

■緊急事態宣言をはるかに超える反響を集めた国民的タレントの訃報

まず、関心度の変化を把握するため、新型コロナ関連の投稿数推移を調査した。

投稿数は2月27日の全国一斉休校要請時に第一のピークを迎えたが、その後減少し、3月21日に底打ちとなった。これは3連休の中日であり、多くの人が花見や旅行で外出したタイミングと重なる。感染に対する関心が薄まっていたことがSNSの投稿量に表れていると推測される。

しかし、志村けん氏の訃報により投稿数は一気に5倍近く増えた。その後、4月7日の緊急事態宣言で投稿数は一時増えたものの、5月4日に緊急事態宣言の発表が延長されたが、事前に延長が予期されていたこともあり、SNSの反響は3月21日並みに薄かった。

■投稿者心理は「不安と恐怖」から「連帯と応援」へ

次に、投稿内容の傾向をつかむため、新型コロナ関連のつぶやきで多く使用されている単語上位100ワードを月ごとに調査した。

【2月に投稿されたワード】

2月時点では、「肺炎」「インフル」「症状」などのキーワードが目立っており、そもそも「新型コロナとはどういった病気か」という点に関心が集まっていたようだ。また、この時点では新型コロナ感染そのものへの不安よりも、急遽要請された休校や、相次ぐイベント中止についての単語が多く見られた。また、「トイレットペーパーが売り切れる」「お湯を飲むと予防になる」といった誤情報が拡散し、「デマ」についても一定の投稿があった。

参考:デマ情報の拡散メカニズム

【3月に投稿されたワード】

3月に入ると、「影響」「感染拡大」という単語がトップに並ぶ。欧米にも感染が広がり、国民的スターの志村けん氏の逝去が報じられる中、「ショック」「怖い」「死ぬ」「心配」「亡くなる」「負ける」など深刻な不安を表す単語が増えている。

【4月に投稿されたワード】

4月に入ると、「#コロナに負けるな」 「コロナ対策」などポジティブなキーワードが増加しており、長引く自粛生活の中、前向きに状況に向き合っていこうという気持ちの変化がうかがえる。「医療従事者」「看護師」という単語も見られ、最前線で新型コロナと闘う医療関係者についても関心が高まっていることが分かる。企業はこういった気運に合わせてキャンペーンを展開し、「応募方法」「プレゼント」「抽選」などの単語が急増している。

3か月間を通してみると、「新型コロナとは何か」を理解しようとした2月から、「感染拡大の不安」に包まれた3月を経て、「苦境を乗り越えるための対策や意思」が表明された4月、という生活者心理の変遷が文字通り明らかになった。

 

■非常時に支持される企業のSNS施策

本項では、4月に多く見られた企業のSNS施策について考察する。企業の取り組みを分析するにあたり、新型コロナ関連のつぶやきでエンゲージメント(シェア/リツイート)が多かった投稿者上位100から、企業・団体アカウントのみを抽出した。

1位「クオカード」の公式アカウントでは、医療従事者へのメッセージを募りつつ、リツイート数に応じてクオカード側が募金をするというキャンペーンが賛同を得て、34万リツイートを獲得した。
(投稿URL)https://twitter.com/quocardofficial/status/1250982321848823810?s=20

4位「コミックマーケット準備会」は、中止となった世界最大の同人誌販売会(コミックマーケット98)に代わり、関連企業・団体とともに「エアコミケ」を開催。オンライン上でイベントへの参加気分を味わえるよう、#エアコミケ のハッシュタグで作品販売情報やコスプレ写真、参加者の感想などの投稿を呼びかけた。
(投稿URL)https://twitter.com/comiketofficial/status/1248537134580920321?s=20

5位「チロルチョコ」は、公式アカウントをフォローしリツイートした人に抽選でお菓子をプレゼントする「#おかしつなぎ」というキャンペーンを展開し、6位の「うまい棒」公式アカウントをはじめ、他のお菓子メーカーも次々に参加。製菓業界を挙げての取り組みとして盛り上がりを見せた。
(投稿URL)https://twitter.com/TIROL_jp/status/1250259618460135425?s=20

類似例としては、ハッシュタグ「#休校中の過ごし方」が挙げられる。一斉休校を受け、タカラトミーは「小中高生でもできる『#休校中におすすめの過ごし方』をツイートしませんか?」と、自社のYoutubeチャンネルや塗り絵を紹介しつつ、自宅で楽しめることを募集。続いてセメダイン、セガなど他企業も自社製品・サービスを使ったユニークな過ごし方を紹介。時間を持て余している子どもや保護者のニーズと合致し、一般ユーザーからも数多くの投稿が寄せられた。
(投稿URL)https://twitter.com/takaratomytoys/status/1234339970548031489?s=20

フォロー/リツイートに応じて企業が募金やプレゼントをする、ハッシュタグ投稿を呼び掛けるといったキャンペーンは従来から馴染みのある施策であり、シンプルで取り組みやすい一方で、やり方次第では「新型コロナに乗じた自社の宣伝」という悪印象を持たれ、炎上にも繋がりかねないため注意も必要だ。

【共感を生んだ施策のポイント】

・「医療従事者への応援」「自粛で沈んだ空気を明るく」「自宅で過ごす時間を豊かに」など、“社会全体”へのポジティブなメッセージを打ち出す

・他社/他団体と協力し、一社の取り組みにとどまらず“業界全体のトレンド”を作る

・“一般ユーザーも参加しやすいテーマ設定”で企画を拡散してもらう

■まとめ

オフラインでのイベント開催が困難になった今、企業にとっても一般消費者にとっても、SNSの存在感は増していると思われる。今後は、目まぐるしく変わる社会の空気を踏まえたSNS施策がさらに重要となるだろう。

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<調査概要>
調査機関:2020年2月17日~2020年5月5日
測定ツール:NetBase
対象プラットフォーム:Twitter
取得ワード:コロナ, コロナウイルス, 新型コロナウイルス, 新型肺炎, COVID-19, COVID, COVID19, 新型コロナ, covid