前編では、マイクロインフルエンサーのプロ意識は「フォロワー数2000人」を超えてから醸成されることを、400名を超えるインスタグラマーへの調査結果から明らかにした。

後編では、マイクロインフルエンサーとのエンゲージメントを高め、より能動的な投稿を促す手法について検討していく。

インフルエンサーを動かすキーワードは「楽しい」「特別」

今回の調査では、インフルエンサーとしての自覚を持つインスタグラマー、つまり2,000名以上のフォロワーを有するインスタグラマーが「SNSで発信しやすい」と考えている商材についても回答を得た。第1位の化粧品・美容関連を筆頭にアパレル系、外食を含む食品・飲料分野、旅行分野と続き、健康食品・生活用品は人気がなかった(図1)。この傾向は想定通りの結果であった。

図1:Instagramで発信しやすい商材

また「楽しかったと感じた仕事内容」という設問に対しては、図2のように体験会、パーティ、メディアイベントという回答を得た。具体例としては「美容オイルを使ったマッサージ体験」や「ファッションブランドの展示会」、「(その仕事で)海外旅行に行けた」、「屋内スカイダイビング」などの回答が寄せられた。このことからは、+αとして「特別感のある体験」を加えることができる案件ならばインフルエンサーのモチベーションを上げられることがわかる。

図2:楽しかったInstagramの仕事形態

当然のことながら「その人の世界観を傷つけることなく」「それなりの金額で」「発信しやすい商材」についてのプロモーション依頼であれば、マイクロインフルエンサーは業務を請け負ってくれるだろう。だが、それだけでは依頼掲載期間を経過したら、その投稿が削除されてしまう可能性もあり得る。
逆説的に言えば、面白みが少なめの商材であっても、楽しさや特別感が味わえる体験やイベントなどを組み合わせ、「やってみたら、意外に楽しい!」と彼女たちに共感してもらうことができたならば、エンゲージメントが高まる可能性が出てくる。エンゲージメントが高くなれば、仕事の枠を超えて、その商品に関する投稿が行われることもある。
インフルエンサーに商品紹介を依頼する場合、そのほとんどは単なるアウェアネス獲得ではなく、ターゲットとのエンゲージメントを目的にしていることが多い。プロ意識の強いマイクロインフルエンサーであれば、頼まれた投稿は実施してくれるが、本当に好きになったものについて書く場合とは「熱量」に大きな差が生じてしまう。そういう意味でも「(世界観ともマッチした)楽しい特別体験」を提供することは、単なる「商品露出依頼」とは比べ物にならないほど価値を生むポテンシャルがある。

インスタグラマーは、お金より「自身のブランディング」が重要

プロ意識を持つインスタグラマーはどのような仕事を望み、そして断るのかについては、「仕事を受ける判断基準」と「仕事を断る要因」に関する質問から導き出すことができた。「仕事を受ける判断基準」については「自分の世界観に合っているかどうか」が何より重視され、報酬金額は二の次という結果が明らかになった。(図3)

図3:Instagramでの仕事を受ける判断基準

「仕事を断る要因」についても同様に、「撮影カットや投稿テキストの指定」、「広告色が強い」といった彼女たちの世界観を変えてしまうような一方的な強制が仕事を断る大きな要因となっている(図4)。

図4:Instagramでの仕事を断る要因

インフルエンサーである彼女たちに仕事を依頼するときは、過去の投稿内容から世界観を把握し、その世界観の中で映える自社の商材/ブランドの魅力を紹介する程度にとどめるべきであり、具体的な撮影カットやテキスト内容はインスタグラマーの“プロ”としてのセンスを信頼して任せることがプロモーションを成功に導くポイントとなる。

(山崎莉沙・渡辺幸光)

*調査概要

調査方法 個別アンケートおよびインターネット調査
調査時期 2017年8月8日(火)~9月8日(金)
調査対象 仕事としてInstagramで企業や商品のプロモーションに協力した経験をもつ
18歳以上の女性インスタグラマー(Instagramユーザー)
有効回答数 402サンプル
調査主体 株式会社プラップジャパン デジタルPR研究所 / 株式会社3ミニッツ
調査協力 株式会社アイズ