デジタルPR研究所では、2018年1月~3月のバズ記事トップ20ランキングについての考察を6月に発表した。今回はその続編として、2018年4月~6月についても同様に、Facebook, Twitterを中心としたSNSのバズ数から、読者、SNSユーザーの傾向を分析する。

これは、プラップジャパンの独自分析ツール『Buzz News Analyzer』を使い、国内主要500ネットメディア全記事のエンゲージメント数を常時観測しているデータに基づいて行ったものである。

■国会議員の発言に注目が集まる

前回の1月から3月の調査期間と同様、上位には芸能人やタレント犬などの訃報が集まっているが、話題数としては同じ数だけ、国会議員の発言に関する記事がランクインしているのが、今回の特徴である。

9位には、受動喫煙対策が議論された衆院厚生労働委員会で、がん患者が意見を述べている最中に自民党議員が「いい加減にしろ!」とヤジを飛ばした事件がランクイン。現場で委員会を傍聴していたBuzzfeedの記事が、62,000以上のバズを獲得した。

受動喫煙対策の話題では、昨年の5月の自民党厚生労働部会でも別の自民党議員から不適切な発言が注目されており、その時の火種を再燃させた結果となった。

15位の産経ニュースの記事には、国会議員を路上で罵倒した自衛官の供述が全文掲載。対する小西議員の返答や警察官が到着してからの現場の様子を、9ページにわたって赤裸々に報告する異色の記事であった。

18位はいまだ記憶に新しい「セクハラ罪」について。「現行法令において『セクハラ罪』という罪は存在しない」との答弁書を閣議決定したと報じる毎日新聞の記事がランクインした。バズの内訳をみると、これらの国会議員に関する記事はすべてFacebookよりもTwitterのほうが1.5~3倍多いバズ数となった。

欧米では政治的な話題もFacebookでシェアされるケースが散見されるが、日本の場合、記事のシェアによって自身の政治的志向が反映されてしまう、もしくは議論を引き起こしてしまう可能性がある内容の場合には、拡散エンジンとしてTwitterが選ばれていることがわかる結果となった。

 

■勢いにのるマス媒体

上記の産経、毎日を含め、上位20位のうち8記事がTVや新聞といったマス媒体からのランキング入りとなった。前回が3件のみだったことを考えると、その急増ぶりが伺える。

マス媒体のデジタル記事は、1〜2年前と比較してバズの獲得がしやすくなってきているのだが、今回もそうした傾向を裏付ける結果となった。

トピックを見ると、SNSを元記事にしたフジテレビ以外はすべて政治関連または何らかの問題を提起するような記事となっており、マス媒体ならではの社会性の高い話題がSNS上でも注目を集める結果となった。

このことが社会的なテーマに関心をもつメインストリームな読者の増加を示しているのか、かつての(ネタ的な記事を多数シェアするような)いわゆるネット民的なSNSユーザーがFacebook/Twitterを離れていっただけなのかは引き続き考察の余地がある。

こちらもSNSプラットフォームによるバス数の違いに注目すると、ほとんどの記事でTwitterがFacebookを上回っていた。そんな中で『沖縄慰霊の日:平和の詩「生きる」全文』だけがFacebookでTwitterの2倍のバズ数を記録した。

たとえ政治的な話題であっても、「平和」などを扱った議論の余地がほとんどないものについては、積極的にFacebookで拡散される傾向にあるようだ。

 

■総バズ数は減少。しかし3位以下のバズ数はすべて前回を上回る結果に

1位~20位までの総バズ数を合計すると、1~3月は1,416,017件、4~6月は1,265,623件となり、約150,000減という結果になった。しかしここで3位以下の記事を比較すると、すべて前回のバズ数を上回っていた。

これは、前回のランキングで1位~3位を独占した大杉漣さんの訃報が、ある意味イレギュラーなほどのバズ数を獲得していたからだ。このとき、1位が193,225、2位が187,182とどちらも20万に近いバズを記録している。これがどれほどイレギュラーだったかというのを検証するために、2017年のバズ記事TOP10 を出してみた。

このように、20万バズという数値は年間トップレベル。しかもそれが2件ということから、このニュースがネット民に与えたインパクトの大きさがうかがえる。逆に言えば、こうした”異常値”の存在をのぞけば、4~6月の期間では傾向値としてバズは増えていると言って問題ないだろう。

肌感覚としても、最近はWeb記事のシェアの伸びやすさを感じており、読者のシェアボタンを押すハードルは下がっているようだ。

逆に言えば、SNS上にはそれだけ多くのネット記事が流れていることとなり、そこでの注意を引き付けるハードルは上がっている。バズ戦略を考えるうえでは、こうした潮流の変化に合わせ、エンゲージメントの指標・基準の見直しを短期的に行っていくことが成功のカギを握るということは、肝に銘じておくべきだろう。