1年ほど前、日本のデジタルメディアのトップ500媒体についてそのVisit数やバズ獲得状況について分析した記事を公開した。今回は、前回調査から1年が経過し、デジタルメディアの影響力がどのように変化した(もしくはしなかった)のかを検証するべく、メディアの分類はそのままに、1年後の現状について調査を行なった。

1. 調査対象媒体

今回の調査対象媒体は、デジタルメディア情報を集めた弊社データベース「Digital Media Wiki」において「訪問者数が多い」「ソーシャルでの拡散に強い」「配信先を多数持つ」など、世の中に対して比較的高い影響力を持つと判断されたサイト517媒体(2017年は567媒体)を抽出し、分析した。なお訪問者数については、SimilarWeb Proの数値を参照している。

2. 調査期間

基本となるVisit数やPV数といったデータは、SimilarWeb Proの2017年および2018年6月時点の数値を用いた。バズ数については、弊社独自の「Buzz News Analyzer」を使い、2017/18年の6月時点の数値を集計した。なお、ここで言う「バズ数」とは、各媒体に掲載された記事がFacebookおよびTwitter上でエンゲージ(シェア/いいね/リツイートなど)された数のことを指す。

3. カテゴリ別のメディア数/Visit数/バズ数の分布

今回調査した媒体数は、1年前と比較するとおよそ1割(50媒体)少ない。しかしVisitの総数は去年の30億強から今年はおよそ40億弱に増えている。一方でバズの数に大きな変化はなかった(図1)。

図1:デジタルメディア調査の全体像

この1年で日本人のメディアハビットが大きく変化したわけではなく、しかも対象媒体数が減少しているにも関わらず、合計Visit数が約1.3倍に増えた理由の考察は後編で説明するとして、まずはメディア分類による構成比を確認したい(図2)。

図2:カテゴリ別に見るデジタルメディア

媒体数から見ていくと46%とほぼ半数がオンライン専業系のメディアである。これはおそらく「簡単に立ち上げられるから」という理由によるものと考えられる。マスメディアはその多くがすでにデジタルでも提供されており、また2次メディアは立ち上げまでにコストがかかるのに対し、特にオンラインの専門メディアは、集客につながる専門の知識さえあれば、初期投資も少なく始められるからということがこの理由であると推察される。

次にVisit数で比較すると、二次メディアが44%と一番多い。17%という媒体数から比べると2.5倍にあたるわけで、Visitの半分くらいを稼いでいる事になる。自分たちで記事を書かないメディアが一番アクセスを集めている、つまりマネタイズに成功しているという現状からは、現在のデジタルメディア構造の課題が透けて見える。

最後に取得バズの割合比較であるが、これは一番多いのがマスメディアとなった。昨年と比較すると5%ほど減ってはいるが(42%→37%)、フェイクニュースなどの影響もあってか現時点でも特に信頼度の面でマスメディアが「シェアするに足るメディア」と認識されているものと考えられる。

4. 詳細カテゴリ別のメディア数/Visit数/バズ数の分布

3つの大分類を、さらに細かく9分類で確認したものが図3である。

図3:詳細カテゴリ別に見るデジタルメディア

図3を見ると、オンライン系のメディアの中でも一番多いのは特定領域の専門媒体(ビューティー、ファッション、スポーツなど)となっている。トップ500媒体全体の35%、オンライン系メディアに限ると7割以上と非常に多くの専門メディアが存在していることがわかる。

Visit数で注目して欲しいのがYahoo!ニュースの20%という数字である。媒体が1つ(ドメインでいうと「news.yahoo.co.jp」「headlines.yahoo.co.jp」の2つ)しかないにも関わらず、全Visit数の20%を獲得しているという、文字通りの「ネット界の巨人」ぶりが伺える結果となった。

バズの数で見ると一番多いのは新聞であった。バズの世界ではマスメディアが強く、しかもそのうちの7割弱は読者離れが進行している(と言われる)伝統的メディアの新聞という点は非常に興味深い。これは新聞に対する信頼度の高さとともに、新聞社の豊富な取材力に基づく独自ニュースがデジタルの世界でも求められていることを証明する結果ではないかと考えられる。